恋するために生まれた

翌日。

朝から
雨が降っていた。




“雨じゃなきゃくるんだよな”


ツバサの言葉を反芻する。



雨じゃ屋上で話せない。
空もゆっくり見られない。


――今日は行けないな。


あたしはガッカリしてるけど
ちょっとホッとしている。



ツバサに惹かれはじめているのが
怖かった。

ツバサはいつか
あの病院に来なくなる。
そのとき
あたしたちがどうなるのか
聞きたい気もするけど
怖くて聞けない。






ボーッと部屋の窓から
空を見つめていると
母が起きてきた。


「あれ?ユウ学校は?」

「今日は休む」

「え?どっか具合悪いの?」



あたしは雨を見ただけで
もう今日は
何もしたくなくなってしまった。
元来ナマケモノなのだ。




「胸が痛い」



ボソッとあたしが呟くと

「恋わずらいなんじゃないの」

と母が言った。




「そんなんじゃない」



あたしは怒ったように
音を立てて冷蔵庫を開けると
コップに牛乳を注ぐと
ゴクン、とひとくち飲んだ。