恋するために生まれた

「暗ぇなぁ」


ツバサが吐き捨てたように言う。


「人間に抱きしめてもらえば
 いいじゃんか」






――人間に。


あたしを抱きしめてくれる人。

お母さん。
もうしんじゃったお父さん。
それしか思いつかない。





「いーの。
 人はみんな
 いつかいなくなるから」


ツバサの顔が、一瞬曇った。

思いつきで言った言葉なのに
そんな顔をされて
あたしは戸惑う。



「そーだな」




それきり
しばらくツバサは黙ってしまった。

黙って、
ふたりで空を見ていた。




たまらず
あたしが口を開く。

「ねぇ
 しんだ人は空にいると思う?」


ツバサはフッと笑った。

「さぁな」



あたしはその笑顔に
嬉しくなる。


「俺、しんだことねーから
 わかんねーや」

「そうだよね」

「でもさ
 おまえがそう思うんなら
 そうなんじゃねーの?きっと」





そうなんだろうか。

小さな頃、
母はいつも言っていた。
お父さんは天国から
ユウを見守ってる、と。

天国はどこにあるんだろう。




「じゃあ天国って
 どこにあると思う?」


ツバサはちょっと考えて
こう答えた。