恋するために生まれた

あたし
男の人って苦手だったのに
ツバサとは自然に話せる。

そのことに
自分でビックリしていた。



「ツバサといると
 緊張しないね」

「なんだよ。心外だなぁ」

「光栄、でしょ」




小さな頃から
周りには女の人だけしか
いなかった。


父は二歳のときに
しんでしまったし
おじいちゃんもいなかったし
もう人生スタートした時点て
男運がなかった。
いろんな意味で。





「男の人って苦手だったのに」



ツバサは柔らかく微笑んだ。

あたしはそれに
少しドキッとした。






――え?

ドキッとした、なんて
初めてだ。

でも本当に
ドキッとした。





「俺も女の人ニガテ」

「嘘ばっかり」

「うん。ウソ」




ツバサが笑って
あたしも笑った。



ツバサの笑い声は
あたしの中に心地よく響く。


女ともだちとは違う声。

少し低めで、安定感がある。
それがすごく心地いい。

そう思ったのは初めてだった。


あたしは誰のことも
特別に想ったことや感じたこと
なかったから。