――空が高い。



あたしは
ある大学病院の屋上から
空を見ていた。



九月の
夏と秋の入りまじった空。

あたしはこんな空が好きだ。
すがすがしいのに切なくなる。






広瀬ユウ。
高校二年生。

あたしは別に
病気でもなんでもない。

だけど
いつもこの大学病院の屋上に
空を見にきていた。




通ってる高校に近いのと
あまり人が多過ぎないのと
静かな気持ちになれるのが
理由といえば理由だ。


最近の
お気に入りの場所。




――我ながら暗いヤツ。

そう思ってちょっと笑った。



別に友達がいないわけじゃない。
成績も中の上くらいだし
容姿だって
美人ではないけど
悪くない、と思う。




「変わってんのかもね」

小さな声で呟いてみた。
周りには誰もいない。
ちょっと離れた場所に
おばあさんがいるくらいだ。



一人ぼっちはキライだけど
一人の時間はキライじゃない。



ほぼ毎日あたしは
時間の許すかぎりこの屋上で
一人の時間を満喫している。



ただ空を見て
ボーッとするだけ。


たぶん
あたしの前世は
ナマケモノなのだ。