「いいって……言ってるでしょ、聖河!」
梓は思わず聖河を抱きしめていた。
赤い瞳には涙が浮かんでいる。
「もうわかったから……話さなくていいから……。ご……めん、聖河……。」
「……気分が悪くなるような話だろう?自分でもそう理解していたから、誰にも話したくなかった……話せるはずもなかった。」
聖河はそう締めくくると、目を閉じた。
「……弟さんとは、それから会ってないの?」
よほど集中して聞かないと聞こえないような小声で、梓が訊く。
「そうだな。両親にも会わないでくれと涙ながらに言われたからな。」
「……寂しくない?」
「寂しい……のだろうか。思っても解決しないことは、極力思わないようにしている。」
「……そっか。」
梓はもう何も聞かなかった。
抱きしめる腕により強く力を込めて、長い間、そうしていたのだった……。

