「奴隷か。雄河もそう思ったのかもしれない。だからこそ、三年前……事件が起きてしまった。穏やかで明るい雄河が、狂ったように暴れたのだ。雄河は狂気に満ちた恐ろしい表情で包丁を手に持つと……両親の前で自分を刺した。」
梓は両手を口に当て、絶句した。
「自分の周りに広がる血だまりを見ながら、自分は死ぬんだと思った。意識が消えて行くことが闇に呑まれているように感じた。」
「もう……いい。それ以上……話さないで。」
「雄河も自分を刺した後、気を失ってしまったらしい。目を覚ました時……自分は全てを失っていた。雄河は、自分に関する記憶だけ無くしてしまっていて、両親は……しばらくの間、叔父の家へ行ってくれと自分に言った。自分は、その言葉に従い、家を出て叔父と生活するようになった。」

