クロスロードラヴァーズ




「梓は……優しいんだな。」


「優しくなんかないよ、全然……。」


「いや……優しい。柚枝を傷付けまいと想いを隠して……自分を傷付けそうになったことを謝ってくれた。友達思いで素直な良い子だ……。」


聖河の大きな手の温かさをを後頭部に感じて、今度は梓の顔がカアッと赤くなる。



「聖河……また子供扱いしてるでしょ。やめてよ……私はもう立派な大人なんだから!」


「わかっている……子供扱いしているつもりはない。ただ……大人でも誉められたい時や甘えたいはずだ。今の梓は……そんな時のような気がした。」


梓の髪を撫でることを止め、聖河は真顔で言った。


顔を上げ、彼の顔を見つめる梓。



「わかったフリしないでよ……。聖河だって子供のくせに……。」


「その通りだ。自分は大人ぶっているつもりはない……。生きる意味を見つけたいと願うだけで行動はしない、無力で我が儘な子供だ。」