「ただいま……って、なんで僕のクッションが玄関に?」
夕方六時過ぎ。
帰宅した柳都は、クッションを拾い上げながら怪訝そうに眉を潜めた。
いつもは、おかえりという声が聞こえるはずのリビングから、物音一つ聞こえてこない。
「梓ー!クッションはおまえの仕業だろー?怒らないから返事しなさーい!……居ないのかな。」
自問自答しながら、リビングに入っていく柳都。
やはり、梓の姿は無かった。
(珍しいな……梓がこんな時間まで出かけているなんて。)
ソファに腰掛けようとして右手をついた柳都だったが、
「痛っ!な、なんだ?」
手の平に激痛が走り、反射的に手を引っ込めてしまった。

