郁は首を傾げつつも、梓が案内したリビングへと入っていく。
梓はソファに座るよう彼女に促し、自分もその隣に腰を下ろした。
「いつ来ても……ほんまきれいやな、宇都町家は。柳都はんの掃除が行き届いてるんやな。」
リビングを見回しながら、郁が感嘆の声を上げる。
「柳兄は、異常なほどきれい好きだから。あんまりきれいすぎると、散らかしにくくて困るけど。」
「ええんやない?散らかしとった方が、柳都はんも片付け甲斐があるやろうから。」
冗談混じりの郁の意見に、梓がそれもそうかと同意する。
「そういや、その柳都はんは今日おらへんの?」
「……柳兄はビルの清掃のバイト行ってるよ。うってつけのバイトだと思う。」
「確かに、柳都はんにはピッタリのバイトやな。親友の柚枝はんは?」
「柚枝は……」
梓は病室でのできごとを思い出し黙り込む。
「あー……梓はん?柚枝はんがどないかしたん?」
「……知らない。デートでもしてるんじゃない?」
「要は……深く突っ込むな。そういうことやな?」
郁の質問に、梓が無言で頷く。

