「梓!」


「梓ちゃん……。」


救急車が病院に到着して、わずか数分後。

柳都と柚枝が、タクシーで病院に駆けつけてきた。



「柳兄……。柚枝……。」


待合室のソファーに腰掛けていた梓が、すがるような目つきで二人を見返す。

顔面蒼白で、彼女の方がケガ人のような顔をしていた。



「此処無 聖河……彼の容態はどうなんだ?」


「……わからない。たった今、手術室に運ばれていった。当たり前だけど、中には入れてもらえなかったから。」


「そうか……。」


柳都はそう返すと、梓の隣に腰掛けて小さくため息をついた。



「梓ちゃん……柳都兄さん……。うち……手術室近くのソファに座ってますね……。うちのせいだから……少しでも側に居たい……。」


柚枝は弱々しげに言うと、フラフラと手術室の方へと歩いていく。



「待つんだ、柚枝!そんな状態で一人で行くのは危ない!」


「柚枝……。柳兄、私達も行こう。ここじゃ……落ち着かない。」


「梓……。うん、行こう。」


柳都と梓も急いで後を追う。



三人が部屋の前に来るのを待っていたかのようなタイミングで、手術室の赤いランプが点灯したのだった……。