「それ、梓にも言われたよ……。声が上擦ってるとか、僕がファミレスの制服着て接客しているところを想像したら笑えるってさ。」
ため息をついて、肩をすくめる柳都。
柚枝は一口紅茶を飲んでから、ドーナツの箱を開けて柳都に勧めた。
「どうぞ、柳都兄さん。抹茶系もありますから。」
「ありがとう。一つ貰うよ。」
抹茶好きな柳都は、箱の中から抹茶がふりかけかられたドーナツを取り出す。
反対に、抹茶が苦手な柚枝は固めたチョコが片側だけ付いたプレーンドーナツを手に持った。
「頂きまーす。」
「頂きます。」
二人が同時にドーナツを頬張ろうとしたその時、
「……楽しそうだね。」
廊下から、女性の冷めきった声が聞こえた。
柳都と柚枝が声の方向に目を向けると、眉を潜めた不機嫌そうな表情の梓が立っていた。

