「私さ……真剣に考えた。自分なりに一生懸命……私自身の気持ちに正直になって考えた……。そうして出た答えは……」
聖河は無言で梓の顔を見つめ、彼女の次の言葉を待つ。
「私……聖河とは……付き合えない……。」
少しの静寂。
まるで、梓と聖河の居る空間だけ時間が止まってしまっているかのように、風の音すら聞こえず静かだった。
「……そうか。」
聖河は何の感情も込めずに短く言った。
表情は、悲しげでも淋しげでもなく、ただぼんやりとしている。
いたたまれない気持ちになって、梓が謝りの言葉を述べようとした時。
「梓……ありがとう。」
彼女は聖河の腕にふんわりと優しく包み込まれていた。
思いがけずかけられた感謝の言葉に、泣くまいとこらえていた梓の瞳からツーッと一筋の涙が零れる。
