「まだしてないよ。柳兄のこと、異性として見たことは一度も無かったから……。」
「悩んでいるのか?」
「……うん、悩んでる。断ったら、柳兄が居なくなるんじゃないかって思ったら返事するのが怖くて……。」
梓は両腕で自分の体を包んで俯いた。
「ごめん……聖河。返事しに来たのに、私の泣き言なんか聞かせて……本当にごめん。」
「謝らなくていい、梓。それに……逆だ。自分に相談してくれたことをすごく嬉しく思う。」
「うん……、そう言ってもらえると……だいぶ気が楽になる。聖河……前置きが長くなっちゃったね……。聖河への返事のことだけど……」
梓は口元は笑っているのに、目にはうっすらと涙を浮かべたどこか悲しそうな笑みを聖河に向ける。

