ドアを開けて入ってきたのは、彼とは恋仲にある宇都町 梓だった。
学校帰りのようで制服姿に、茶色い長い髪を後ろでシニヨンにまとめている。
「……梓か。立ち話もきついだろう。そこの丸イスに座ってくれ。」
「うん……ありがとう。」
梓は聖河が指差した丸イスに腰掛ける。
聖河はそれを確認してから、小説にしおりを挟み、ベッド横の棚に置いた。
「話というのは?」
「その……この間の告白の返事なんだけど。」
梓は、ソワソワしているように顎の右下を掻いて聖河から目を逸らす。
意外にも、あのことかと聖河の態度はそっけなかった。
「返事などいつでも良いのだが……。」
「ふふっ、聖河ならそう言ってくれると思った。でも……急がなきゃならない理由ができたから。」
「理由……?」
聖河は梓を凝視して首を傾げた。
梓の顔から笑みが消え、真剣な顔つきに変わる。
「聖河に告白されたこと……柳兄に言ったんだ。そうしたら、今度は柳兄に告白された。」
「……そうか。返事はしたのか?」
梓はゆっくりと首を横に二度振る。

