「余計な詮索を致しましたね。お詫びを申し上げます。」
「……用は何だ?」
「明日の日程をお伝えに参りました。見合いの時間は十時、別邸の霧の間で行います。くれぐれも遅刻されぬよう、お願い致します。」
執事の言葉に、火槌はああと短く答える。
それでは、と執事は一礼してから部屋を出て行った。
再び、部屋に一人になった火槌は
「明日……十時に全てが終わる、か……。」
いつもの彼になく、弱気な口調でそう呟いたのだった……。
夕方の病室。
コンコンと二度、誰かがドアをノックした。
「……どうぞ。」
ベッドの上部を三十度ほど上げて、小説を読んでいた此処梨 聖河は、視線をドアに移して言った。
「聖河……話があるんだけど。」

