メッセージを聞きたくなければ通話終了ボタンを押せばいいのだが、郁はそれはせずに録音されるメッセージに耳を傾ける。
『郁……俺様だ。この間は悪かったな……謝っておく。言い訳にしか聞こえないかもしれねえが、あんなことをしたのには二つの理由がある。一つはしばらくの間、外出できなくなること。親父の喪からだいぶ経って、俺様は社長として本腰を入れねえとならないからな。もう一つは……一週間後に見合いがあるって聞いたたからだ。……好きでもねえ女と政略結婚させられる前に、好きな女に気持ちを伝えたかったっつうこった。郁……信じられねえだろうが、俺様は本当ににおまえに惚れていたんだぜ。できれば、おまえと……』
録音できる時間の一分が過ぎ、メッセージは途中でプツッ……と切れる。

