その時。
「わっ!?」
ブルルル……ブルルル……と再びケータイが振動する。
メールならば三度ほとで振動は止むのだが、全く止む気配が無かったため、電話だということに郁は気付いた。
(メールだけやと埒あかん思うて、電話に切り替えたんやろか……梓はん。)
そんなことを思っていた郁だが、ケータイ画面を覗いた彼女は目を見開いて固まってしまった。
表示されていた名前“宇津町 梓”ではなく、“時神 火槌”だったからである。
「火……槌はん……。」
ブルルル……ブルルルとケータイは急かしているように震え続ける。
だが、郁はなかなか通話ボタンを押せなかった。
やがて、振動は止み留守番サービスのメッセージが流れる。
「……。」

