「こーんにっちは!今日は、ドーナツのお土産です!梓ちゃん、居ますか?」


開いた玄関で、橋口 柚枝(はしぐちゆえ)は元気よく挨拶をした。

右手にはドーナツが入った白い箱を携えている。

初夏を思わす桃色のワンピースがふわりと揺れた。



「ああ、柚枝か。こんにちは。夏休みだというのに、梓のために毎日来てくれてありがとう。」


口元に微笑を讃えて礼を述べたのは、宇都町 柳都(うづまちりゅうと)。

柚枝が目的としている人物、宇都町梓(うづまちあずさ)の兄。

夏の定番のタンクトップに長ズボン姿である。



「どういたしまして、柳都兄さん!梓ちゃんは、部屋ですか?」


「ごめんね、梓は一人で買い物に出かけているんだ。男の僕では付き合えないような買い物でね。」