「あっ……。えっと……その……」


「そろそろ白状しちゃえば?気が楽になるよ。」


「い……言えない、言えないの!そ、そうだ。うち、職員室行かなきゃならなかった。じ、じゃあね、梓ちゃん!」


「あっ、柚枝!」


柚枝は大慌てで弁当箱を片づけると、ダダッと教室を飛び出ていった。



「見ちゃったことって……一体、何を見たのさ、柚枝?」


教室に残された梓は、小首を傾げてぽつりと呟くのだった……。
















電気が消され、月明かりだけが唯一の光源となっている薄暗い部屋。


ブルルル……ブルルルと、熊のストラップが付いた緑色のケータイがバイブ音を立てて震えた。



「……。」


持ち主は、布団の中に潜り込んだまま、手だけ伸ばしてケータイを取った。

布団と持ち主の間に生じた僅かな隙間に、月光が入り込み、持ち主の姿を浮かび上がらせる。


緑色の短い髪、焦げ茶色の瞳とその右下に泣きボクロを持ち、左腕に青いリストバンドを付けた少女、的場 郁だった。


彼女は、受信メールを開くと心の中で文章を読む。