クロスロードラヴァーズ




「……っ!!」


数秒間の沈黙の後、我に返った郁は両手でドンッと火槌を突き飛ばす。

火槌はよろめきはしなかったが、数歩後ずさって目を細めて郁を見つめた。



「な……んで、こないなことするんや!阿呆……火槌はんの阿呆!!大っ嫌いや!!」


目にうっすら涙を浮かべて一方的に言い放つと、郁はタタッと走って行く。



「大っ嫌い、か……。」


一人残された火槌は言葉を繰り返すと、郁が落としていった缶ジュースをひょいひょいと拾い上げていく。



「……おいっ。見せもんじゃねえぞ、おまえら。」


中身が零れた一本を拾おうとした手をピタリと止め、殺気を帯びた低い声で言う火槌。