「誰のせいや思うてんねん!!あんさんと話したいって、ちょびっとでも考えとったオレがバカやったわ……。」
前半は大声で、後半は小さな声で言うと、郁はくるりと踵(きびす)を返す。
「どこ行くんだよ、郁。此処梨の病室は、反対方向だぜ?」
「えっ……そ、そやったかいな?オレ、こっちから来たはず……っ!?」
振り返った郁は、一瞬にして言葉を続けられなくなった。
眼前に目を閉じた火槌の顔があり、唇が触れ合っていたからである。
驚きと混乱のあまり、郁の手から力が抜け、五本の缶ジュースがゴロンゴロンと落ちた。
フタの空いた缶は、床にビチャリと中身を撒き散らし、床にじわじわ染みを作っていった。

