クロスロードラヴァーズ




「わっ!わっ!わあっ!誰やねん!何すんねん!!」


怒声を上げながら、郁は缶ジュースを取り上げた人物の方を振り返る。

そして



「……あっ。」


言葉を失った。


それもそのはずで、その人物は郁が会って話がしたいと思っていた人間で……



「よおっ、郁。相変わらず、緊張感が足りてねえな。」


時神グループの社長に就任したばかりの時神 火槌その人であった。

火槌は床に転がった四本の缶ジュースをひょいひょいと拾い上げると、郁に手渡す。



「ほらよ。次は落としても拾ってやらねえからな。」


「お、おおきに……って、なんでオレが礼言わなあかんねん!火槌はんのせいで落としたんやから、むしろ火槌はんが謝らないかん方やろ!」