「きゃっ!ま、待って、雄河君。歩くペース速すぎるよ!」
柚枝は医者の姿をチラチラ省みながらも、雄河に付いて行くしかなかったのだった……。
その頃、柚枝に置いてけぼりをくらった郁はというと。
(柚枝はん……なかなか戻ってこへんなあ。)
五本の缶ジュースを両腕に抱えたまま、柚枝の帰りを待っていた。
既に三十分は経っていたが、一向に柚枝が帰って来る様子は無い。
(腕がだるくなってきたわ……。先に病室戻っといてもええかな?)
一つため息をついて、郁が病室へ向かってゆっくり歩き始めた時。
「あっ!?」
後ろからスッと伸びてきた誰かの手が、缶ジュースの一本を取り上げた。
その一本分の隙間から、残りの四本の缶ジュースがゴロンゴロンと次々に落ちていく。

