「雄河君!」
一際明るく、扇子のような折り筋が付いた黄緑色のカーテンが半分ほど開けられた部屋。
柚枝はその奥に雄河の姿を見つけ、名前を呼びながら入っていく。
「ゆ、柚枝さん!?」
雄河は面食らったような表情を浮かべ、振り向いてガタリと丸椅子から立ち上がる。
彼の隣には、白衣姿の医師が背もたれのある椅子に座っていた。
「急に居なくなっちゃうからびっくりしたよ!お医者さんと聖河君のことについて話してたの?」
「は、はい、まあ……。」
雄河はまずいところを見られたとばかりに、柚枝から目を背けて口を苦らせる。
「君も此処梨 聖河君の親族かな?」
「えっ?うちは……」
「違います。柚枝さんはただの知り合いです。」
きょとんとしている柚枝に代わり、雄河が医者に答える。
その口調は淡々としていてどこか冷たい響きを放っていた。
「雄河君……?」
「先生、話はまた後日に。……行きましょう、柚枝さん。」
医者に軽く頭を下げると、雄河は柚枝の手を引いて歩き出す。

