「だが、なぜ梓達がここへ……?」
「僕が呼んだんだ。兄さん、気を失う前にそこに居る梓さんの名前を呼んだから。百十番した後、兄さんのケータイから梓さんに電話して……梓さんから柚枝さんと郁さんに連絡が回ったんだ。」
「……そうか。自分は梓の名前を……。」
雄河の言葉を繰り返すように、聖河は小さく呟いた。
「ねえ、郁ちゃん、雄河君。うち、安心したら喉が乾いちゃったなあ。一階の売店まで一緒に付いて来てほしいな。うち、すっごい方向音痴だから。」
何か思い付いたように、柚枝が梓と聖河以外の二人を誘いかける。
「飲み物買いに行くなら、私も一緒に……」
「あ、梓ちゃんの分もちゃんと買って来るから、梓ちゃんはここに居て!ほら、聖河君に誰か一人付いていた方がいいでしょ?じ、じゃあ、行って来るね!」
「あっ……柚枝!」
梓の制止を振り切って、柚枝は郁と雄河を連れてあっという間に病室から出て行った。
後には、聖河と梓だけが残る。

