「柚枝……郁……。大丈夫……だ……。消毒液の……匂いがする……場所は……病院か……?」
梓達の後ろから顔を覗かせた二人の女性の質問に、聖河は弱々しい声ながらもしっかりと答えた。
それを聞いて、その場に居た四人がホッと息をつく。
「兄さん……覚えている?僕と話している最中に、いきなり倒れたんだよ?」
「……ああ、覚えている。まだ頭がぼんやりしているが、その理由も……わかっている。」
理由って何と、柚枝が尋ねる。
「……。」
聖河は答えない。
視線は、四人ではなく天井に移されていた。
「まあまあ、柚枝はん。そないな込み入った話は、聖河はんが回復してからでええやんか。」
「そ、そうだよね。ごめん、聖河君。うち、答えづらいこと聞いちゃったね……。」
郁に窘められて申し訳無さそうに謝る柚枝を、構わないと聖河は快く許した。

