(暗い……。)
聖河は思った。
今の彼の周りには光など無い。
ひたすら暗い世界へ、落ちていっている。
(ここは……何なんだ……?自分は……)
「聖河!」
「兄さん!」
突然、トーンが違う二つの声が聞こえ、視界が明るくなった。
「……っ?明るい……。」
聖河は不思議に思いながら、目を半分ほど開ける。
すると、目の前に聞こえてきた二人の声の主の姿が見えた。
一人は高校生ぐらいの女性で、もう一人は彼が気を失う直前まで会話をしていた青年だった。
「梓……?雄河……?」
「聖河っ……良かった。やっと目を覚まして……。」
「兄さん……本当に良かった……。」
名前を呼ばれた梓と雄河の二人は、目に大粒の涙を浮かべて言葉を返した。
「聖河君!大丈夫?」
「ここがどこだかわかるかいな、聖河はん?」

