同日夜、時神家。
「………。」
時神 火槌は、自室のベッドに寝転んで頭の後ろで両腕を組み、ぼんやりと天井を見ていた。
風呂上がりなのか一部だけ赤い黒髪はまだ少し湿って広がっており、藍色の瞳に滴がポタリと流れる。
彼が愛用する金色のサングラスは、ベッドサイドの棚の上に置かれていた。
「兄貴!勝手に入るぜ!」
静寂を破るように、部屋の入り口ドアがバタンと荒々しく開かれる。
火槌は目だけをそちらに向けた。
「ノックぐらいしろ、颯真(ソウマ)。それによ、俺様は寛ぎ時間を騒音で邪魔されたくねえんだ。」
颯真と呼ばれた青年は、ベッドにつかつかと歩いて来て、火槌の前に仁王立ちした。
動く度に上下に揺れる艶やかな黒髪にドクロのシルバーピアス。
意志の強そうな太い眉はつり上がり、色素の薄い茶色の瞳は咎めるように火槌を睨んでいる。
「兄貴……会社を一人で継ぐって本気かよ。」
「嘘で俺様がそんなこと言うと思うか?」
火槌は挑戦的な薄ら笑いを浮かべて、聞き返す。

