「あの……ハンカチは洗って返しますから。」
「いえ、お気遣いなく。差し出がましい真似をしたのは、僕の方ですから。」
少年はニコリと笑って言うて、柚枝の手からハンカチを受け取りポケットから出したビニール袋の中にしまった。
「だ、だったら、そのハンカチの代わりに今度新しいハンカチをあげます!」
「いえ、ハンカチのことは気にしないで下さい。代わりと言っては何ですが……あなたに訊きたいことがあるんです。」
「うちに訊きたいこと……?」
小首を傾げて聞き返す柚枝。
少年は、はいと頷いてから急に真顔になった。
「此処梨 聖河という方をご存知ありませんか?この近辺の町に住んでいるとお聞きしたもので。」
「えっ……聖河君なら、叔父さんの家に戻ったって聞きました。それがどこにあるかは、うちは知りませんけど……。」

