「もう……本当に最悪……。」
低いトーンで呟きながら、柚枝はハンカチを取り出そうと右肩にかけたショルダーバックを開けた。
その時。
「良かったらどうぞ。」
彼女が探し出すより先に、青いハンカチを差し出した人物が居た。
その人物は、白に近い灰色の短い髪に黒い瞳を持つ精悍な顔の少年。
年齢は柚枝と同じか少し年下に見えた。
首に銀色のクロスチョーカーを付けている。
「あっ……ありがとう。」
柚枝は礼を述べてハンカチを受け取ると、汚れた部分をスタンプを押すようにポンポンッと軽く叩きながら拭き取る。
その間、少年は濡れないようにと柚枝の頭上に傘を差し伸べていた。

