「くくっ……お前、何っつう妙な声出してやがんだよ?くははっ!マジで笑えるぜ!」


「か、考えごとしとったんやから、仕方ないやろ!そ、それより、何て言うたん?聞こえへんかったんやけど。」


「ああっ?大したことじゃねえけどな……」


火槌の言葉に覆い被さるように、彼のケータイがピリリッと着信音を放った。

ちょっと待てと郁に手で合図すると、火槌は茂みの奥に向かって数歩歩き、通話ボタンを押す。



「ああ、俺様だ。何かあったか?……マジかよ、それ。わかった、すぐ戻る。それまで余計なことはするんじゃねえぞ。」


三十秒と経たずに通話を終えると、火槌は郁に向き直る。



「悪ぃな、郁。俺様は先に帰るぜ。」


素早く方向転換すると、火槌は遊園地の出口へ向かって走り出す。



「あっ……火槌はん!」


遠ざかっていく火槌の背中を見送りながら



(急にどうしたんやろ、火槌はん……。なんや、火槌はんがオレの前から消えてしまうような嫌な予感がするわ……。)


言いようのない奇妙な胸騒ぎを覚えた郁だった……。