沈みかけた夕日が辺りをオレンジ色に染める。
藍色の空はもうそこまで近づき、遊園地のアトラクションがライトアップされ始めていた。
「普通、ロマンチックなムード出したいなら観覧車に乗ると思うんだけど。」
コーヒーカップの縁に右腕を載せ、梓は不服そうに口を尖らせて言った。
「そういうものなのか?」
聖河は梓の非難するような目つきの意味を解することなく、しれっとした表情で応える。
二人の他にコーヒーカップに乗っている男女は居ない。
梓が言うように、夕暮れの時間にカップルは大抵が観覧車に乗っており、コーヒーカップに乗るのは一部の親子連れぐらいだった。

