「へっ?突入って……わっ!?どこ行くねん!?」
火槌は郁の左手を取り、茂みから飛び出した。
「よう、此処梨。こんなところで会うなんて奇遇じゃねえか。」
「あっ……ははっ……梓はん、久しゅう。」
名を呼ばれ、梓と聖河はほぼ同じタイミングで声の方を向く。
「時神!?」
「郁!」
火槌は余裕たっぷりの表情で、郁は困ったように眉を下げて二人の前に立った。
「奇遇ついでに、ダブルデートといこうぜ。ちょうど、親父からテーマパークの無料ペアチケットをもらったばかりだからな。」
「ダ、ダブルデート!?勝手に決めないでよ!」
「あいにく、有効期限が今日までだ。拒否権は無えぜ?」
「だからって……」
反論しようとした梓の前に右手を出し、聖河はゆっくりと二度首を横に振った。

