クロスロードラヴァーズ



郁は火槌との会話を諦め、うつむいてハアとため息をついた。



(調子狂うわ……。火槌はん、いつもやったら何か言うてくれるんに……。今日はオレと一言も口聞いてくれへんなんて……。なんや、悲しくなってきたわ……。)


感傷的な気分になった郁の瞳から、一筋の涙が流れて地面にポタリと音を立てた。


そんな彼女の頭に、火槌の右手がポフッと優しく置かれた。



「ふえっ……?」


「……ちっとは黙って見てらんねえのかよ、郁。バレちまうだろうが。」


半日ぶりに聞く火槌の声。

少しトゲトゲしくてぶっきらぼうだったが、郁には心地よいものに感じられた。



「ひ、火槌はん……。無視されとるかと思うたやん……。」


「俺様はそんな大人気無えことしねえよ。それより……頃合いか。突入するぜ、郁。」