言葉とは裏腹に、嬉しそうに口元を綻ばせている。
良い雰囲気を醸し出す二人を、近くの茂みから見つめる二人の男女の姿があった。
「ええ感じやな、あの二人。」
梓のいとこで彼女を呼び出した的場 郁と
「……。」
聖河の悪友で彼を呼び出した時神 火槌 である。
いつもなら郁の言葉には必ずといっていいほど反応する火槌だが、今日はずっと無言だった。
「な、なあ、火槌はん?さっきも訊いたけど……オレの話、聞いとるかいな?」
「……。」
「昨日のこと……やっぱり怒っとるんやろ。その……理由無しにひっぱたいてほんまに悪かったと思っとる。反省しとるから、そろそろ許してや……。」
何を言っても、火槌は無言で梓と聖河を観察しているだけだ。

