クロスロードラヴァーズ










日曜日の十時五十八分、那珂樫駅の噴水前にて。



(指定時刻二分前……時神の姿はまだ無いか。)


聖河はそわそわしているように、左手でケータイを開いたり閉じたりを繰り返していた。




休日というだけあって、駅の出入りは激しく、聖河と同じように噴水前で数人の男女が待ち合わせしている姿が見られた。



(梓……時神に何もされていなければいいが……。)


「えっ、聖河?なんで……?」


久しく聞く声に驚き、聖河は顔を上げた。


すると、彼の目に映ったのは……



「梓!?なぜ、時神ではなく、梓がここに……?」


呼び出した時神 火槌ではなく、宇都町 梓の姿だった。

茶色いパーマ髪を二つ結びに束ね、レース素材のヒラヒラした服にハーフパンツをはいていた。

赤いカラコンを入れた瞳は、通常の二倍ほどの速さで開閉されている。