(声が止んだ……?)
梓の部屋のドアの外。
柳都は呼びかけを中断し、中の音に耳を澄ましていた。
柚枝は長時間の声かけに疲れてしまったようで、数分前から床に座り込んでうつむいている。
「梓……?」
………。
声どころか物音一つ聞こえない。
いくら静かにしていても人が居れば気配を感じるものだが、つい今まで感じていたそれを感じれなくなったのだ。
「梓ちゃん……窓から飛び降りちゃったんじゃ……?」
不安そうに眉を下げて見上げる柚枝に、まさかと柳都が反論しようとした時。
ピンポーンと何とも気の抜けるような、単調な音が聞こえてきた。
玄関外側に設置されたチャイムの音である。

