「おおっ、デートの誘いか?いいぜ、行ってやる。じゃ、明日の夕方六時に公園でな!」
デートちゃうわという郁の訴えを軽く聞き流して、火槌はケータイの通話終了ボタンを押す。
「よしよし、掴みは上々っと。あとは……」
誰にともなく呟くと、火槌は自分のケータイを手に取り、何やらメールを打ち始めた……。
同じ頃、郁は……というと。
「ああっ!!何やっとんねん、オレ……。なんで、一番会いとうない人と会う約束してるんや?」
自室の薄水色のベッドにうっ伏して、嘆き口調で自問自答していた。
彼女の飼い犬のパピヨンが、どうしたのと言いたげに首を傾げて見つめている。

