「来たな。」
ニヤリと不敵に笑って、火槌はケータイの通話ボタンを押す。
「もしもし、俺様だ。」
『“俺様だ”やないわ!何、他人のケータイ勝手に持って帰っとんねん!!』
電話のスピーカー部分からは、空気がピリピリ震えてしまうような凄まじい怒声が聞こえてきた。
名乗ってはいないが、火槌にはその声の主が誰だかわかっていた。
「キイキイ喚くんじゃねえ、郁。耳が痛くなっちまうだろうが。」
『うっさいわ!そないな前口上せんと、早よケータイ返しぃや!!』
「俺様は親切に拾ってやったんだぜ?返して欲しいっつうんだったら、自分で取りに来な。」
『と、取りに来いやて?何っちゅう傲慢な……。あんさんの家知らへんし、取りに行けるわけないやろ。』
郁の威勢が弱まっていることに気付き、火槌はここぞとばかりに言葉を続ける。
「だったら、おまえの家の住所教えろ。返しに行ってやってもいいぜ?」
『来んでええわ!別に今日中に返してもらわなわけやないし……明日の夕方六時に、公園で受け渡しでどや?』

