「今頃、一人で騒いでるだろうな、郁の奴。くくっ……慌ててる顔が見れねえのが残念だぜ。」


チェス盤のように黒と白のアーガイル模様の布団が敷かれたベッドの上。

時神 火槌は熊のキャラクターストラップ付きのケータイを、左手で上に放り投げてはキャッチするという動作を数十回繰り返していた。


経済理論関連の書物が散乱したベッドの枕元には、充電中の黒いケータイがある。

それはつまり、手で弄んでいるケータイの所有者は彼ではないことを示していた。



「もう一時間経ったな……そろそろか。」


枕の上に置かれた銀色の目覚まし時計を見て、火槌がそう呟いた時。

空中から彼の手に落ちてきたケータイが、ブルルル……ブルルルと振動し、ポップなCM曲が鳴り響いた。