「な、何すんねん!そ、そないに近付かんでも聞こえるわ!」
「逃げんじゃねえよ、郁。変なことはしねえって。耳打ちしようかと思っただけじゃねえか。」
「そ、そないな言葉信じられへん!か、紙に書いて見せてくれればわかるわ!」
「たくっ……腕回されたぐらいでうろたえんなっつうんだよ。小学生か、お前は?」
「え、ええから、紙に書いてと言うとるやろ!」
火槌は、へいへいと面倒臭そうな返事をして、上着のポケットからメモ帳を取り出す。
そしてそれに、ボールペンで何やら文章を書いた。
(どこまで人をおちょくるんや、この男は!警戒解かれへんな……。)
「おいっ、できたぜ?」
「わっ!?」
二メートルは離れていたはずの火槌を目前に確認し、郁は思わずドテッと尻餅をついた。

