未来のない優しさ

「あの事故は…トラックがきっかけの玉突き事故で、そのトラックを運転していたのはKHの下請会社だったんだ…」

おおよその予想はついていた…。

あえて裁判資料も見なかった柚が巻き込まれた事故。
今戸部先生が言った内容もきっと周知の事実なんだろう…。

柚が消えた後、一切を忘れたくて目をそらしていた多くの事実が一気に押し寄せてきて、この10年以上の日々が一体なんだったんだろうと…

柚の為に費やす事もできたはずの時間を悔やむ気持ちで胸が痛い。

夕べ見た柚の体中に残る傷痕が浮かんできて、更にやるせなくなる。

「…で、高橋社長と打ち合わせをして…法的に彼女を初めとして、他の遺族も守ってやってくれ。何人かサポートに加えるからな」

「…わかりました」