未来のない優しさ

孝太郎という後輩を送り届けた後、妙にぐったりと助手席に体を預けている柚は、いつもより疲れているように見えた。

「…月曜からそんなに疲れて大丈夫か?」

「…うん…大丈夫。でも眠い…」

小さく息を吐くと、ゆっくり落ちていく瞼。
そのままふっと体の力が抜けた気配を感じる。

「…ここで寝るなよ」

もちろん、俺のつぶやきが届く事もなく、柚の意識は既に夢の中。

家までのあと5分が我慢できないほど疲れてるのか?

仕事ができるのと、好きなのは違うんだぞ。

女で課長になる事がどれだけ大変だったかは簡単に想像できる。

「定年までまだまだ出世しなきゃ」

ふざけた笑顔の中の本気の決意を感じた時、もう俺のもとに戻るつもりがないと受け入れるしかなかった。