未来のない優しさ

ふと気付けば。

わずかにひきずる足。
多分、周囲に気づかれないよう歩けるように訓練したせいで、足を酷使した後にはかなり疲れて思うように動かないはず。

…あの事故以来、そんな足と向き合って受け入れて。

気持ちは泣いていても、笑って過ごしてきた柚…。

健康な足だけでなく、俺さえも手放した。

柚…。

相変わらず辛そうな足で立ったまま。

俺が連れて帰る。

車を降りて柚達に向かいながら。
柚の背後で特別な視線を投げている男…大和だったな。
その男に妙にいらだちを感じた。

目を見開いて驚く柚達に構わず、車道を渡った。