未来のない優しさ




まさに偶然。

裁判に必要な資料をもらいに、担当の会社に行った帰り。
信号待ちで止まった大通りの向こうに見えた柚の姿。

白っぽいスーツにヒール。
細い体を一層華奢に見せてしまうようなアップにした髪型。
俺はおろした方が好みなんだけど…。

会社の同僚らしいメンバーと話していた。

もう11時をとっくに過ぎている月曜日。
もう帰るなら拾って帰ろうと携帯を鳴らした。

…予想通り慌てる柚に思わず顔が緩む。
俺が近くにいてる事に全く気づかない。

必死で携帯に話しかける様子が、俺の疲れた気持ちを和ませる。