未来のない優しさ

高校時代に柚を失って、ある意味俺は壊れてしまった。

また会えると思っていたのに会えなくなって。

入院した病院に駆け付けても家族以外は会えないと、病室に近寄る事もできなかった。

マスコミから逃げるために姿を消した柚を捜すにしても、まだ子供だった俺には限界があった。

せめてもう少し大人で、
家族だったなら…当たり前のように側にいられる権利があったはず。

だから。

柚と再会して、壊れた心がつなぎあわさって、愛する自分に気づいた時から。

家族になろうと。

ちゃんと同じ戸籍に柚を縛って、正々堂々と家族になろうと決めていた。

なにがあっても側にいられる権利。
誰にも邪魔されない権利が欲しくて、急いだ結婚。

結婚に対して不安を持つ柚に、申し訳ない気持ちよりも、いつ引き離される運命に落とされてしまうかという不安の方が大きかった。