未来のない優しさ





『疲れが一気にたまって限界だったみたいね。
ゆっくり体を休めたら大丈夫よ』

友美先生の言葉に少し安心して。

柚の事が気になりながらも、俺は病院を出て役所に向かった。

柚と二人で提出する予定だった婚姻届を一人で提出。

椅子に腰掛けて、受理証が発行されるのを待っていると…。

膝の上に置いた手が震えてくる。
ぐっと両手を握りあわせても止められない。

今頃…。

ホテルの廊下で抱きとめた柚の軽い身体の感触がよみがえる。

俺に言った柚の本音に嬉しさと喜びを感じるのと同時に、薄れていく意識の先に何が待っているのかを…二度と目を開けないんじゃないかと想像して気が狂うほどの恐怖もよみがえって…。

わかっていたはずなのに、柚に自分自身全てを支配されているんだと改めて実感する。