未来のない優しさ

救急隊員から連絡してもらい、かかりつけの友美先生のもとへ運んでもらった。

到着してすぐに運ばれた処置室に、俺も付き添った。

「ご家族の方ですか?」

看護師にそう聞かれて
思わず舌打ちしたくなる。

「婚約者です」

ベッドに横たわる柚から目を離さずにぶっきらぼうにそう告げると、

「あ…。患者さんのご家族は来られますか?」

予想通りのクールな声。

「だから、俺がいるだろ。婚約者ってのはだめなのか?」

荒い声に眉を寄せる看護師を睨みつけて

「柚は大丈夫なのか?
友美先生はまだ来ないのか?」

「…友美先生はすぐに来ますから…」

まだ納得していない顔で俺を見る看護師にため息をつくと、スーツの内ポケットから取り出した用紙を広げて見せる。

今日提出する予定の婚姻届だ。