未来のない優しさ

それでもちゃんと言わなきゃ…。

あの日言いたくても言えなかった気持ちを…。

ゆっくり健吾の顔を見上げると、心配そうに見つめる愛しい瞳。

「…私以外の人と一緒にいるの…嫌だ。

ずっと健吾の側にいたいから…離さないでよ…」

荒い息の合間にそう言って、健吾のスーツの裾をぎゅっと握りしめた。

はあっと大きく息を吐いて、少しずつ遠くなる意識の中で。

高校生の弱い私が言えなかった重い後悔の言葉を
大人になった今こうして
言う事ができて…。

ずっと抱えて苦しんでいた大きな罪悪感が洗い流されていくような気がした…。

倒れ込む健吾の胸は…

とても居心地が良かった。