未来のない優しさ

健吾を…失う事になるかもって考えると怖くて…足がすくんで動けなかった。

人混みに紛れていく二人の楽しそうな笑顔が痛くて。

…でも結局。

あの時怖がらずに健吾に声をかけて、何を言われたとしてもすがりついて離れないって伝えなかったから。

健吾を失ってしまった。

それはずっと残ってる後悔。

私にはなかったすがりつく強さがあれば、あの時運命は変わってたはず…。

何度も何度もあの時に戻ってやり直したいって願いながら生きてきたから。

もう二度と後悔なんてしたくない…。

「柚ちゃん…?」

部屋のドアを開けた葵ちゃんの声が聞こえても、私の目は健吾の背中を見つめたままで…。

様子がおかしいと思ったのか、私の腕に手を置いて顔を覗き込む葵ちゃんに、一瞬笑って見せると

「…私にも強さはあるはず…」

呟いて走り出した。